Over Line~君と出会うために
「そ、それって、どっち……?」
 恐る恐る聞き返せば、彩はぱちぱちと瞬きをして、小さく首を傾げた。
「……そうね、別に東城くんのことは嫌いじゃないし、考えてもいいかな」
「本当に!?」
「私は嘘が嫌いだから」
 そう憮然として言い放った彩を、思いきり抱きしめようとして自分が持って来た箱に阻まれた。恨めしげにその箱を見ていると、彩はその箱と貴樹の顔とを見比べ、くすりと笑う
 彩の反応を見る限り、正直、貴樹の気持ちがちゃんと伝わっているかどうかは怪しいものではあったが、そんなもの、後から何とでもなる。最終的に、わからせてしまえばいいのだ。
 貴樹が、本気で彩を好きだということを。
「……ところで」
 と、感動も何もなく、彩が箱を持ち上げた。
「え」
「この、場違いなほどに大きな箱は何?」
「ええと……ケーキ……なんだけど……」
「こんなに要らないんだけどなぁ」
 そう苦笑しながら、彩は一抱えくらいありそうなケーキの箱を抱えたままで溜め息をついた。それは苦笑に近いもので、決して貴樹を拒んでのものではないことがその態度で何となくわかった。それがわかってしまえば、何もかもがどうでもよくなってしまうくらいに嬉しくなってしまったのだった。
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