Over Line~君と出会うために
 大輔はひとしきりぶつぶつ言っていたが、すぐに行くと言って電話を切った。
 大輔が住んでいるのは、彩のアパートのある駅からふたつほど離れた駅が最寄り駅になる。別に示し合わせたわけでもないのだが、最初からその立地だ。そのせいで、実家を離れてもお互いに行き来するのは変わらない。
 いっそくっつけばいいのに、と母親から言われたこともあったが、彩にとって大輔は兄のようなものだったし、大輔にとっては妹とさして変わらない。家族のような相手にそんな色めいたものを期待されても困る。大体、もし、そうなったとしたら、こんなふうに頻繁に入り浸っていたら逆にまずかろうとも思うのだ。
 三十分と経たないうちに、大輔がやって来た。時間が時間なだけに、電車ではなくバイクで来たらしい。
 いつものように上がり込んだ大輔は、テーブルの上に鎮座したままのケーキの箱に目を丸くした。
「何コレ」
「持って来た」
「オタクが?」
「いつまでオタク呼ばわりなのよ。まあ、その通りなんだけど。あー、大輔、どれ食べる?」
 実は結構甘い物好きの大輔は、さっさと自分で箱を開けて吟味している。取り分けるためにお皿を渡すと、やけに真剣に悩んでいた。
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