Over Line~君と出会うために
「おはようございます!」
「……はい、おはよう」
 にっこりと笑って、差し出された手紙とプレゼントらしき小さな包みを受け取る。可愛らしくラッピングされたそれらは、彼女たちの気持ちだ。こうしてプレゼントをもらったり、手紙をくれたりすることは、素直に嬉しい。
 天気の話や、流行の服のこと。女の子たちと当たり障りのない会話を交わして、他のメンバーが来るまでの時間をつぶす。
 こうしてファンの子と喋るのも、相手が顔見知りにも近い昔からのファンだからだ。売れる前からの貴樹を知っている相手には、少しだけ警戒心も緩む。こうして貴樹のそばまで来て話すことができるのは、昔からのファンがほとんどだ。貴樹自身も彼女たちの名前や顔を把握しているし、これまでに変なことをされたこともない。彼女たちは懸命に貴樹の好みそうな話題を探して話しかけてくれるから、その努力はすごいなと感心してしまうくらいだ。
 だが、放っておいて欲しい、と思うこともある。
 興味がないこともないが、どうでもいいことを延々と話されても苛々するだけだ。
 それに、貴樹のオタク暴露以降、アニメの話題を振って来るファンも増えた。付け焼刃の知識であれこれと喋られても、どう反応すればいいのかわからない。それは違うと突っ込みを入れたらいいのか、それとも、流すべきか。突っ込みを入れたら入れたで熱く語ってしまいそうな自分がいるし、間違っているのをそのままにしておくのも何となく嫌な気がする。
 そうなると、聞き流すしかない。
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