Over Line~君と出会うために
「いや、アニメ見て興奮じゃないんじゃねーの? 貴樹は恋のお悩み中、だからな。アニメの美少女に萌えるより、そっちで頭いっぱいなんだろ」
 他人の恋路は笑い話にしかならないらしく、天宮がげらげら笑いながら言い添える。
「順平ちゃん、ひどい……」
 いつものメンバー、いつもの会話。そこに、不協和音が入ることはありえなかった。このメンバーでいることは何よりも楽しくて、素晴らしいことだと思っていた。これだけの人材とめぐり合えたことは、自分にとって一生に一度の幸運だったと思わずにはいられない。このメンバーが揃っていなかったとしたら、今のREAL MODEは成立していないと思っているからだ。
 だから、気づかなかった。気づけなかった。
 追っかけの子たちと話していたその光景を、物陰から彩が見ていたこと。来ているはずもないと思っていた彩が、その場にいたこと。
 そして、そこから少しずつ歯車がずれて行くことを、貴樹はまだ知らずにいた。

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