Over Line~君と出会うために
 辛い。苦しい。
 一言では言い表せないほどに、身体がだるい。気分が悪い。身体が自分のものではなくなったかのように重苦しくて、ほんの少しの動作さえも億劫に思えるのだ。
 貴樹は最大にしていたシャワーを止め、傍らに手を伸ばして用意しておいたバスタオルを取った。大雑把に水滴を拭ってそのまま部屋に戻ると、机の上に置いてあった加湿器のスイッチを入れ、ベッドへと転がった。しばらくすると、蒸気が噴き出して来る静かな音が聞こえ始めた。
 他のメンバーは、イベンターの人たちと打ち上げと称して飲みに行った。一応、誘われはしたが、本調子ではない貴樹はそれを断り、ホテルの部屋で休むことにしたのだ。主役がいないのはどうかとも思ったが、ライブの後に外出できるような余力は、正直言ってどこにも残っていなかった。
 ふと、携帯が気になった。
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