Over Line~君と出会うために
「で、でも、大丈夫だよ? 点滴打ってもらって楽になったし」
 傍から見てもかなり青白い顔をしているくせに、そんなことを言ってみても説得力が乏しい。と言うよりも、皆無だ。その子供じみた言い分に、栗原は呆れ果てたように溜め息をついた。
「……あのね、大丈夫じゃないから言っているんでしょ。あんたはバカだから言わなきゃわからないかもしれないけど、かなり辛いんでしょう? さっき、那覇空港でファンを怒鳴りつけそうになってたのは知ってるのよ。あれだって、自分がしんどいからでしょう。自分に余裕がないから、些細なことで苛々するのよ。あんたは追っかけに当たり散らすような真似は普段しないし、いつもだったらあの程度で怒鳴ったりしないのは自分でわかるでしょ」
「でも、俺、今日は用事が」
「恋人? そんなことは後にしなさい」
 栗原はぴしゃりと言い放ち、くるりと踵を返した。
 そして、待ってましたとばかりにスタンバイしていた天宮に合図をする。
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