Over Line~君と出会うために
 開演の二十分ほど前に、会場に着く。周囲を見回すと、若い女の子ばかりで戸惑ってしまう。大抵は若い女性のグループか、カップルが多い。とは言え、大輔と連れ立っている彩は、傍から見たらカップルに見えるのだろう。
 貴樹が置いて行ったチケットは、二枚あった。貴樹の置き手紙にあった希望通りに大輔を誘ったところ、そんなのは知らんと言いながらも付き合ってくれた。
 こういう場所に来るのは、初めてだった。
 流行の音楽にほとんど興味はなかった。街中で耳にする音楽を知らずに覚えたりすることはあるが、それだけのことだ。今、どんな音楽が流行っているのかも、実はよく知らない。基本的にテレビを見るということをほとんどしないから、自然にそういった情報には疎くなる。
 そもそも、慣れていないからやりにくい。まず、こういう場所に何を着ていけばいいのかというところで、悩んで蹴躓いてしまったのだから始末に負えない。
 あれこれ悩んだ挙げ句、仕事帰りの無難な服装だ。周囲には華やかな色合いの服を来た女性も多く、そのことにも驚いてしまう。
 まごつきながら会場内に入る。あちこちに貼られたポスターはシルエットとロゴだけのシンプルなもので、ここで歌うのが誰なのかというのはよくわからない。はしゃぐ周囲に気圧されるように客席へと移動したものの、勝手もわからない。チケットに記載されている座席に行けばいいのだろうが、その場所が今ひとつ把握できない。チケットを持って座席を探してうろうろしていると、案内係らしき女性が近づいてきて、そこまで誘導してくれた。
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