ひだまりHoney

私は逃げるように歩き出した。どんどん足早になっていく。

「あー、平加戸! あのさ、それ、今持ってるヤツなんだけどさ」

紺野たちさんの横を、つむじ風さながら通り過ぎようとした瞬間、聞き慣れた声が追いかけてきた。

立ち止まり振り返れば、「すみません、行きます」と女性に言葉をかけ、紺野さんが走り寄ってくる。

彼に寄り添っていた女性が残念そうな顔をした。

紺野さんは立ち止まることなく、通りすがりに「行こう」とだけ囁いてきた。

私も小さく返事をし、紺野さんに続く。

名残惜しそうに紺野さんを見つめていた女性は、リボンのロゴが印刷されている小さな紙袋を持っていた。

彼女が紺野さんに夢中になっていたことが、きっとセッティングの遅れていた理由だろう。

< 150 / 447 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop