ひだまりHoney
同時に、熊男がイライラしていた理由も分かったのだけれど、だからと言って、私を怒鳴らなくても良いのにと思ってしまう。
あのブランドの化粧品は昔使っていたけれど、これから手に取ることも、購入することもきっとないだろう。
私は斜め前を行く紺野さんの背中に声を掛けた。
「もう並べてきちゃいましたけど……回収してきますか?」
「いや……ごめん、ダシに使った。助かった」
紺野さんはちらりと遠くを確認してから、声を潜めて返事をする。
「それ俺運んどくから、待機がてら休憩してくれる?」
「良いんですか?」
「うん。どのブースも大体仕上がってきてるし。木村にも、会ったらそう言っておいて」
紺野さんが私の持つダンボールを受け取ろうと、手を伸ばしてきた。