ひだまりHoney
聞かれても、何も考えられなかった。
目の前の恐怖に耐える事で精一杯だった。
「ふうん。紺野もすっげー真面目な振りして、彼女以外の女とヤルことやってんだな……まぁ、気が向いたからちょっと遊んでやるかって程度だよな、なんせ珠洲だし」
また着信音がなった。明るく高い音色に、勇弥君がちっと舌打ちをした。
「しつこいな」
彼がポケットから鍵を取り出し、私を押しつけている車のドアの鍵穴に差し込んだ。
重々しく、ガチャリと解錠する音がした。
恐怖がつま先から駆け上っていく。
必死に逃げようとしたけれど、手荒に開かれたドアの向こうに押し込まれる。
体中が震えた。
「こ、こな……こっちに、こない、で」
上手く発音できていない私を見て、勇弥君が愉快そうに顔を歪めた。