ひだまりHoney
涙で滲んだ視界の中にいる勇弥君が、近寄ってくる。
「何? まだ男恐いの? 相変わらず面倒くさい女だな」
車の中に足を踏み入れた。その重みで車体が揺れる。
座席の上に投げ出された格好のまま、私はできる限り後退する。
「紺野って、見かけによらず、ドSだったりする?」
「あっち、いって、よ」
「希世みたいに自分にべた惚れな女じゃ、全く面白くねえもんな。いじめがいがねぇよな」
「おねがい、だから、こないで!」
にやりと笑みを浮かべた。
何か面白い物を見付けたような顔に、私は恐怖を覚えた。
「俺もさぁ。お前のその恐がってる顔、時々思い出すんだよね。やっぱ、そそるわ」
咄嗟に、持っていた鞄を彼の顔面目がけて振り上げた。