ひだまりHoney
「あぁ、お腹いっぱい。胸一杯。ご馳走様……そろそろ帰りますか?」
凉太が満足そうにお腹をさすった。
会計ボタンを押して店員を呼び出した。
皿の数を数える店員の背中を見つめていると、ふと女性の声が耳に引っ掛かった。
心臓が重々しく鳴り響いた。私は慌てて周囲を見回す。
レーンを挟んだ向こう側、店の奥側の席にその姿があった。
「良いの? 早く行ってあげなよ」
「良いの、良いの」
心配そうな声音に、強い声音が続く。
「だって。行ったら晴暉、別れ話するんだもん。応じられますかっての……晴暉のことこんなに好きなのに別れたくない」
希世さんがいた。
紺野さんと一緒のはずの彼女は、友達だろう女性と食事をしていた。道理で、返信が早いはずだ。