ひだまりHoney
思わず時間を確認してしまった。
紺野さんと会社前で別れてから、三時間近く経っている。
「雨降ってるみたいなのに、大丈夫?」
「私と話したくてしょうがない男は、待たせとけば良いの」
紺野さんは傘を持っていなかった。
雨の中で一人待っている彼を想像すれば、こんなにも胸が苦しくなるのに……それなのに、なぜこの人はこんな温かな場所で、食事をしながらくつろいでいるのだろうか。
「風邪ひいちゃったりして」
「それならそれで好都合よ。家の中に入る口実できるじゃない。いつもは絶対入れてくれないけど、弱ってるときだったら、私に頼りたくて家の中に入れるだろうし」
「で、迫ろうって寸法でしょ?」
「良い作戦でしょ。あの男、保留中だろとか言って、エッチどころか触ろうともしないし。しかも私に必要以上に触るなって言うのよ。屈辱よね」