ひだまりHoney
口元を指先で拭って、希世さんは友人に笑みを向ける。
「でもねあの人、女とプライベートなことであれこれ言い合うのすごく面倒くさがるから、食い下がれば、もういいやこのままでってなるの……簡単よ」
明らかに、その顔は嘲笑していた。
「で、少し前から、きっちり別れてくれとかまた言い出したの。しかも今回アイツ粘るのよ」
「もしかして、好きな人でも出来たとか」
「そう。今日の昼間、白状したわ。でも俺が一方的に好きだから、彼女は関係ないとか何とか言ってたけど……馬鹿じゃないの!?」
遠近感がおかしくなりそうだった。
やけに希世さんが遠くに見え、彼女と友人の声だけがハッキリと聞こえてくる。
「その女、知ってる?」
「この前練習試合見に行ったときに会った。気弱そうな女。困った顔してあんまり言い返して来なかったし」