理想の恋愛関係
……自分のお母さんの病室に入るのに、なぜ決心が必要かのように躊躇うのだろう。


分からない。


だけど久しぶりに優斗君の姿を見て、私はかなり動揺していた。


顔を見たら、やっぱりまだ好きなんだと改めて実感した。


そしてこんなに近くに居るのに、話しかけられない事が苦しかった。


律儀に約束を守っていると言うより、会って失望されるのが怖くて顔を出せなかった。


もう疎まれているけど、これ以上嫌われたくない。


でも忘れる事も出来ない。



まるで病んでいるみたいに覇気が無く沈んだ優斗君の姿が頭から離れなくて、心配で仕方がなかった。


後ろ髪引かれる思いで病院を後にしてからも、頭は優斗君の事ばかりだった。



家に帰ってからも、延々と思い悩んでいた私は、突然有る事実に気が付いた。


優斗君が会社を失ったのもあの立派な屋敷を失いお母さんが病んでしまったのも、破談になった時に私が大騒ぎしたからなんじゃ……。


あの時私がもっと冷静に自分の気持ちを伝えられていたら……プライドを捨てて素直な気持ちになれていたら、何もかもが違ったのかもしれない。


兄だって、優斗君との会社との取引を止めなかったかもしれない。


そう考え始めたら止まらなくなった。


私は部屋を出ると、急ぎ足で兄の書斎へと向かった
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