理想の恋愛関係
何か言いたそうな鈴香に、私はもったいぶる事なく言った。


「今日ね、優斗君に会うのよ」

「は? え……でも緑、失恋したんじゃなかったの?」


首を傾げる鈴香に、私は少し得意になって言った。


「そう思っていたんだけど、優斗君の方から連絡して来てくれたの……会おうって……」


にやけそうになるのを堪えて言う。


嬉しくて仕方なかった。


優斗君から連絡をくれるなんて思ってもいなかったから。


浮かれる私に対して、鈴香は逆に浮かない顔になった。


「ねえ、喜んでるところ言い辛いけど、あえてハッキリ言うけど……彼の用件って何か聞いてるの?」

「え?」

「良い話とは限らないでしょう? 今まで完全無視されてたのに、急に仲良く食事なんて事有る訳ないじゃない」


……確かにそうかもしれない。


急に不安になり、私は作業の手を止めた。


優斗君の用が何なのかは聞いていなかった。


動揺して、そんな事確認する余裕は無かった。


考えてみれば、今まで優斗君から連絡をくれた時は決まって別れ話だった。


まさか……今回もまた別れ話?


でも、もう既に別れているのに、更に止めを刺される事なんて有るのだろうか。


さっきまでの楽しい気持ちはすっかり消えてしまい、代わりに嫌な予感ばかりが頭の中に渦巻いていた。
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