理想の恋愛関係
緑を引っ張り、オフィスビルの裏側に行った。


大通りからは外れている為、人通りは少ない。


適当な場所で立ち止まると、優斗は緑を振り返った。


「緑さん、前も言ったけど、少しは場所を考えてくれ」

「ごめんなさい……動揺して、つい……」


ついで、うっかり公開告白してしまうのか。


あの場に知り合いが居たらどうする気なのか。


そう考えながらも、不思議な事に気分は悪くなかった。


いつの間にか、イライラした気持ちは無くなっていた。


「……緑さんは、この前の見合い相手と付き合ってるんじゃないのか?」

「……え? ど、どうして?!」


緑は心底驚いた様な顔をする。


「……この前、そんな事話してただろ?」


そう言うと、緑は勢いよく首を振った。


「有り得ないから! あの人とは誤解が有って……兄がいい加減なせいなのよ。
とにかく私は優斗君しかいないから!
他の人なんてどうでもいいの!」


さっき注意したばかりなのに、また大胆な発言をする。


半分呆れながらも、胸の中は笑い出したい様な明るさで溢れていた。
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