理想の恋愛関係
「えっ!? 結婚だなんて……気が早い事言わないでよ」


兄にはそう言ったけれど、私としてはとっくに嫁に行く覚悟は出来ている。


優斗君がその気になってくれたら明日にだって……。


もう何度も想像した、優斗君との暮らしを思い浮かべていると、兄の声が聞こえて来て現実に戻された。


「結婚なんて許さないからな!」

「は……何でよ?」

「何でよ……って彼は一度婚約破棄してお前に恥をかかせてるんだぞ、忘れたのか?!」


そんな事、もう遠い昔の出来事に思える。


「お前だって怒って彼を責めてたじゃないか。私と婚約解消したら会社がどうなると思ってるの?! とか脅してただろ?」

「えっ!」


私……そんな事言った?


記憶を探ると確かに言ったような覚えがうっすらと有る。


鬼の形相で優斗君を責め立てた。


私……何て事を。


過去に行って、そんな口をきいた自分を殴り飛ばしたい。


「緑?」

「……あの時は突然の事で錯乱してたの。 あれは悲しみのあまりの言動よ」

「悲しみって、あれがか?」

「とにかく、もう過去の事だからいいでしょ? 自分だって優斗君の会社と何事も無かったように取引してるじゃない」


納得していない様子の兄に、まくし立てた。


「取引してるのは二ノ宮優斗の会社じゃない、九条グループだ!」

「同じ事じゃない! そんなに嫌なら優斗君が事業部長をやってる会社と取引しなければいいじゃない」

「そんな事をしたら、うちの会社が潰れる」


兄は堂々とはっきりと言い切った。


その態度に私が呆れ果てていると、兄は打って変わってしんみりとした口調で言った。


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