理想の恋愛関係
「……」


龍也は私を鋭く睨み戦闘態勢に入っているけれど、私はもう戦意喪失だった。


言いたい事を言ってスッキリしたし、悟りを開いたような心境の今、龍也と言い争う気が起きない。


面倒だしもうどこかに行って欲しい。


内心そう思いながら、龍也が早々に退場してくれそうな言葉を探していると、龍也はついさっきまでとは打って変わった、勢いの無い口調で言った。


「……俺は不幸でどうしようもない男だって言いたいのか?」


「いや、そこまではっきりとは言ってないけど……」


なんで、急に弱々しくなったのか。


不審に思っていると、龍也はフッと笑って言った。


「いつの間にか、緑とは考え方に大きな溝が出来ていたみたいだな」


え……今更その感想?


唖然としていると、龍也は今度は鈴香に向けて言った。


「鈴香さん、変な言い争いに巻き込んで悪かった」

「え、いえ……」


突然話を振られた鈴香は、引きつった笑顔を浮かべて相槌を打った。


「緑はずいぶん変わったが、気の強さだけは変わらないな」


言い争いになったのは、龍也のせいだし、気が強くなってしまうのは龍也が馬鹿な事を言って来るからで……。


言いたい事はこれでもかってくらい有るけど、黙っていれば消えてくれそうな雰囲気なのでグッと堪える。


< 347 / 375 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop