理想の恋愛関係
優斗君の様子はいつもと少し違っていて、やっぱり何か有ったとしか思えなかった。


「優斗君……お母さんに何か有ったの? 今日、病院に行ったんでしょ?」


もう一度はっきりと聞くと、優斗君は少し躊躇いながらも頷いた。


「母は自宅で怪我をしてその治療の為に入院しているんです。その事で緑さんにも話が有ります」

「えっ? 話って……」


優斗君の真剣な様子に、私は不安を感じながら続く言葉を待った。


「母の怪我自体は順調に治って来ています。でも問題は怪我じゃないんです」

「え?」

話が見えなくて戸惑う私に、優斗は憂鬱にそうな溜め息を吐きながら言った。

「……母は……心の病気です」

「え……嘘?」


そんな事信じられなかった。


「だって……以前に何度かお会いした時はそんな風には見えなかったわ」


そう聞くと優斗君は私の言葉を予想していたかのか直ぐに答えた。


「緑さんが母と会ったのは全て二ノ宮の家ででしょう?」

「ええ……」

「母にとってあの家は特別な意味が有ったんです。でも立ち退かなくてはいけなくなって……それから母の様子はおかしくなった」

「……ショックを受けたのかもしれないけど、でもそんなおかしくなる程の事なの? 今だって家が無い訳じゃないでしょう?」

「普通では理解出来ない事だと思う。でも本当の事です……こんな事を緑さんに話したのは、これからの事を話すのに事情を言わないのは失礼だと思ったからです」


「これからの事?」


何を言われるのか分からないけれど嫌な予感がする。
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