理想の恋愛
道中は疲れのせいか特に会話もなく麗の家についた。
既に時刻は9時30分を回っていた。


「実、先に風呂に入っていいよ」


何故か顔を赤くしながら言う麗。


「あぁ。サンキューな」


何か嫌な予感が一瞬脳裏をよぎったが疲れていたのでお言葉に甘えることにした。


「はぁ。疲れたー。」


白く濁った浴槽につかりながらため息をこぼす。

風呂に入るとどうしても考え事をしてしまうのは恐らく、人間のサガだろう。
今日1日を振り返りながら考え事をしてしまう。
あれ?何か大事なことを忘れているような・・・。
その何かを思い出そうとしていた時に、不意に浴室の扉が開く。


固まる俺。

そこには、体をバスタオルでまいた麗が立っていた。
そしてあろうことかそのまま浴室に入ってきた。

「ちょっ!
麗!何してんだ!?」
「ママが実が一緒にお風呂に入るのは照れ隠しだから、実がお風呂に入った後に乱入しなさいって・・・」


あの酔っ払い変態!
実の娘に何を吹き込んでやがる!!

あぁ、まずい体中に冷や汗が。


三十六計逃げるに如かず!
あわてて浴室から逃げようとして浴槽から出た俺。
それを見た麗は更に顔を赤らめて俺の下半身を凝視している。

「ん?」

麗の視線の先を見てすぐに浴槽に体を隠す。
俺の体は麗と違いタオルなど何もまいておらず、いわゆる男性器がまる見えの状態だったのである。

俺は手で男性器を隠して再び浴室を出ようと試みる。
すると、あまりの恥ずかしさでのぼせたのか麗が後ろに倒れそうになる。

それを助けようと女性恐怖症の俺は仕方なく麗の手をつかみ支えようとするが、足場の滑りやすい浴室で見事に足を滑らせ、俺も思いっきり転げる。

急いで立とうとするがなにやろ体に重みとやわらかい間隔が2つ。


俺は今の現状を確認して更に冷や汗が出てきた。


仰向けに倒れた俺の上にうつ伏せで倒れてきた麗がのしかかってきたのである。
何やら柔らかい二つの感覚は麗の少し小さめの胸だった。
本日2度目のはぐ状態。

なんて言ってる場合ではない。


「おい!麗!
早くどいてくれ!
じゃないと俺の意識が!」


あぁ、駄目だ目が回ってきた。
このままではまた意識が闇に落ちる。


大量の冷や汗をかきながらも必死に意識を保ち麗に悲痛な叫びをあげるが、麗本人も現状のせいで意識を失っていた。

そして俺の悲痛な叫びもむなしく、本日2度目の闇に落ちて行った。


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