その指に触れて
7.オレンジ色と灰色
次の日の放課後、あたしは美術室に向かわず、玄関でローファーを履いて校門を出た。


言っとくけど、遥斗の反応が怖くて取っている行動ではない、決して。


本当はめんどくさいけど、ほっといたら後々もっとめんどくさいことになりかねないから、先手を打っておく。


校門から歩いて5分。一軒の家の前に立った。


半年前までは、喜んでここに来てたっけ。まさか、また来ることになろうとは。


あたしはチャイムも鳴らさず容赦なしに家の中に入った。半年前までもそうしてきたし、昨日のメールにも書いてあった。


「晃彦、起きな」


2階の突き当たりの部屋に入り、ベッドで爆睡しているこの部屋の主を叩き起こした。


「んー、待って、あと5分……」


ベッドの中で寝返りを打つ男の背中をはたく。


このベッドも、何人の女が寝たんだか。


「どうせ朝までやってたんでしょ。さっさと戻りたいから早くして」

「……万梨子」

「何?」

「昼までやってた……」

「知るか、んなもん」


こいつはどんだけ溜まってるんだ。


晃彦がベッドの上に座り、前髪をかきあげた。


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