その指に触れて
8．送り主は突然に
もちろん、怖い気持ちはある。


気持ちの問題じゃなくて、体のこと。


つまり妊娠していないかどうか。


晃彦の家に行く日に必ず一回は心配になる。


「ちゃんと避妊してるから大丈夫だって」って、毎回晃彦には笑われるけど。


晃彦はもう数えきれないくらい同じような行為をして一回も妊娠させていないから、心配という心配はとっくのとうに忘れたのだろう。


あたしも最中は快楽と痛みに何も考えられないけど、終わった途端そんな心配を抱く。


今は一応定期的に大丈夫だという体のサインが来ているからいいけど、二ヶ月後、三ヶ月後はどうなっているかわからない。


だったら断ればいいのだけど、それでもあたしはやめる気はなかった。


この気持ちに終わりはあるのか。この行為に終わりはあるのか。


たぶん、あたし達は同じ思いを抱えている。だから肌を重ねて現実逃避をする。


だから、激しい行為で一時でも忘れようとする。


< 139 / 219 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop