その指に触れて
連れて行かれたのは、閑静な住宅街の奥にある小さな倉庫だった。


小さいと言っても、一クラスは余裕で入りそうな、そんな広さ。


呼び出された時点でまさかとは思っていたけど、そんな漫画みたいな展開……。


「俺の家が持ってる倉庫。今は使ってないけど」


どうでもいい。


晃彦が鍵を閉めて、あたしは扉の傍に座った。


さて、どうやって逃げよう。


鍵を閉められてからこんなことを考えるあたしもマヌケだけど。


やっぱり逃げ出せばよかった。


「話ってのは何? さっさと帰りたいんだけど」

「帰ってどうすんの?」

「……は?」


晃彦がゆっくりとあたしに近付いてくる。その顔はまだ満面の笑みで気持ち悪い。


「帰って、好きな男の元にでも行くの?」

「行かないよ」


行ったって、もうどうしようもない。


その途端、晃彦の顔から笑みが消える。眉をしかめて、あたしを見る。


「万梨子、好きだ」


突然の告白にあたしは面食らった。


やばい。危ない。


あたしは立ち上がって、辺りを見回す。扉の向こう側に窓を見つけた。



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