その指に触れて
「もう一度、俺と付き合ってくれ」

「やだ。こんな密室に連れ込んで、同情すらできない」

「やっぱ万梨子は、同情で傍にいたのか」


晃彦と向かい合ったまま後ずさりして、反対側の窓まで足を運ぶ。


晃彦に背を向けたら、たぶん、一瞬でやられる。


「同情以外にどんな感情があるっての? 自業自得じゃない、彼女と別れたのだって。それで今更好き? ふざけんな」


あたしが後ろに足を進める度に、晃彦もあたしとの距離を縮めて来る。


窓はあたしの身長よりも高い位置にあった。しかも、家の台所の窓と同じくらいの大きさで、人一人通るのもどうかってくらい。


ただ、手を伸ばせば窓は開けられる。


混乱した頭で、窓を開けることを第一優先に考えた。


「そうだな、ほんと自業自得だよ。でも、それで万梨子とやれるんだから、悪いことばっかりじゃなかったけど」

「勘違いしてない? あたしはあんたのことなんかどうも思ってないし、やるのだって、あんたが可哀相だから受け入れただけ。あたしは遥斗が好きなの」

「ああ、四組の、一番頭いい奴? へー、あいつが好きなんだ」


ニヤッと晃彦が笑う。しまった。遥斗の名前を出してしまった。


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