その指に触れて
「人の寝顔見るとか、ほんと悪趣味」


顔が熱いまま、遥斗を睨みつける。「ぶはっ」って吹き出されたんですけど。


「お互い様でしょ。しかも万梨ちゃんはどうぞ覗いてくださいって言ってるようなもんじゃん。膝枕してなんて」


いつのまにか、立場が逆転してるよ。


遥斗の泣き顔、見れないじゃないか。


「あんたこそ、寝顔あたしの方に向いてたから見ただけだもん」

「その割には、だいぶ襲ってきたけど」

「……遥斗に言われたくない」

「……だからさ」


途端に、遥斗の表情が顔から消える。ぴくりと唇だけが動く。


「こんなことだけは、もうやめて」

「は?」


いきなり結論ぶっこんできたよ、この子。


「傷付くのは万梨ちゃんなんだよ。体だけじゃなくて、心も」

「傷付いてなんか」

「そうでしょ? 今の万梨ちゃんは、傷を傷で隠してるようにしか見えない。そんなの、勘違いにも程がある。傷が増えてるだけ」

「……じゃあ、聞くけど、あたしにはどんな傷があるっての?」

「それは万梨ちゃんが一番わかってんでしょ?」

「……わかるわけ、ない」


心の傷って、何よ。


過去に傷付いた跡だろうか。それとも、今抱えている重いものだろうか。



< 154 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop