その指に触れて
3.まさかの告白
山田くんのモデルは、九月からと言われた。


今は絵画コンクールの仕上げをしているようで、それが終わってからと頼まれた。


かおりちゃんは息抜き代わりにデッサンさせてもらっていたらしい。


あんなに頼まれたのに、待ったをかけられるあたしってどうなのよ?


ん? なんかこれ、あたしがモデルを喜んで頼まれたみたい?


違うんだけどなあ。


そう思いつつ、ちょっとだけわくわくした気持ちを抱えて夏休みは終わった。


夏休み明け一日目の放課後、あたしは足早に教室を出て校舎の一番奥の教室へ急いだ。


「山田くん~」


美術部の活動は週一だけど、それ以外は部員は出入り自由らしく、山田くんは毎日通っているのだそうだ。


美術室を覗くと、山田くんは既にキャンパスに向けて筆を滑らせていた。


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