その指に触れて
どれくらい時間が経っただろうか。


視線を移すことすら禁止されていて教室の隅の一点を見つめていたら、なんだか目の親近感がおかしくなってきた気がする。


ああ、なんか眠くなってきたし。


「万梨ちゃん、寝ないでよ」


……バレバレ。


「よし、できた」


それからすぐにいつもの遥斗の声が聞こえた。


「……遅くない?」

「デッサン二十分って、けっこう早い方だと思うけど」

「え、まだ二十分!?」


教室にある時計を見てみると、本当にさっきから二十分ほどしか経っていなかった。


「万梨ちゃん、じっとするの苦手?」

「……けっこう」

「モデルに一番相応しくないタイプだね」


くすっと遥斗があたしの隣で笑うもんだからむっとくる。


「なら、他のモデル探せば?」


あたしは好きでモデルやってるんじゃないし。


文句言われるほどじっとするの我慢できないし。


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