その指に触れて
「ま、一ヶ月頑張ったらまたご褒美ちょうだいってこと」

「高いのはダメだよ~」

「んー、まあ、見ようによっては、価値がつけられないほどのものかもね」

「なんのこと?」

「あたしの気分にもよる」

「……意味がわからない」

「遥斗、帰りは正門?」

「いや、裏門だけど」

「残念、反対方向~」

「残念そうに聞こえないけど……」


ずるっと最後の一粒が吸い上げられた。


「はい、遥斗、オレンジジュースあげる」


あたしはタピオカだけがなくなったオレンジジュースを差し出した。


「は? タピオカって、普通ジュースの方を先に飲んじゃうもんなんじゃないの?」

「うまいでしょ。ミルクティーだと好き嫌いあるからオレンジにした。あたし、タピオカだけを食べられる人だから」

「いや、だからって、毎日タピオカ買ってあげられないよ……」

「だからいいって言ってんじゃん。代わりのもの要求するから」

「恐ろしいもの言われそう……。うわ、見事にタピオカだけないし」


あたしから受け取った透明なカップの中身をまじまじと見る遥斗の顔がなんだか幼い。


可愛い……。


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