その指に触れて
「……まあ、もらっとくよ」


長いこと黙った後、遥斗はストローに口づけた。


カップを持つ白い指に目がいく。


指も爪も細長くて、やぼったくない。男の子の中では女々しい方に入るかもしれないけど、すごく綺麗に整っている。


この指が、あたしに触れたら……。


ごくりと喉が鳴るのを見て、あたしは自分がにやけてしまうのを抑えられなかった。


気付いてない……ていうか、わかってないのかな?


わざと狙ってみたんだよ。


立派な間接キ…………


「じゃあ、また明日ね。万梨ちゃん」


カップを持ったまま、遥斗はくるりと背を向けて歩き始めた。


「明日もモデル頼むよ~」


あたしに背を向けながら、後ろ手でひらひらと振っている。


いつの時代の漫画だよ。


……ていうかやっぱり、気付いてないの?


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