この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

○謎の男性




結局、尾てい骨の痛みは治らず、夕方まで医務室で過ごした。


お昼頃、早退しようとベットから起き上がるとおばあちゃんがコンビニ弁当をぶら下げて帰って来て、一緒に食べようなんて言うから、せっかくの好意を無にするのもなんだし、ご馳走になることにした。


その後は、おばあちゃんの昔話しなんか聞かされて、気づくと定時近くになってた。


「ところで……おばあちゃんは、赤毛さんと仲良しなの?」

「あぁ、仲良しだよ。あの子が生まれた時からの付き合いだからね」

「はぁ? 生まれた時から?」

「そうだよ。あの子を取り上げたのは私なんだから」

「て、ことは、おばあちゃん、産婦人科のお医者さんなの?」

「そう、もう引退したけどね。あの子の父親も私が取り上げたんだから。まぁ、その繋がりでここを紹介されて、いい小遣い稼ぎさせてもらってるのさ」


そう言うと今まで明るく笑ってたおばちゃんの顔が曇る。


「どうしたの?」

「あ、あぁ……私はね、あの子が心配なんだよ」

「えっ、どうして?」

「あの子の母親はイギリス人でね、あの風貌だろ? 子供の頃はかなりイジメられてたんだよ。でも大人になるとそれがチャームポイントになったのか、モテる様になって、今じゃ天狗だよ。

なんでも自分の思い通りにならないと気が済まない。ホント、困ったもんだ」

「そうなんだ……」


お金持ちのボンボンでも、色々あるんだな。


「で、おばあちゃん。赤毛さんの名前ってなんて言うの?」

「おや? 言ってなかった? 椎名翔(シイナ ショウ)だよ」


椎名翔か……なかなか、いい名前だ。


「じゃあ私、そろそろ帰るね」

「あらそう。また何かあったらおいで」

「うん、ありがと」


まだ痛みが残る尾てい骨を押さえながら医務室を出てエレベーターで1階に下りる。


エントランスをゆっくりすり足で歩いていると、誰かが後ろから私の腕を掴んだ。


「な、何?」


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