この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
――なんて思ってたのに、先に潰れたのは私の方だった。
「橋倉ちゃん、もう一軒行っちゃう~?」
「もうダメだって、送ってくから住所教えて?」
「あ、そうだ! いいお店があるのれす! 橋倉ちゃんを特別に招待致します」
私の言ういいお店=『エデンの園』だった。
お店に入った橋倉さんは暫くの間、ピクリとも動かず直立不動で突っ立っていた。
それでもママに勧められ、おっかなびっくり席に着くと次第に笑顔を見せ始める。
「ミーメちゃんがお世話になってる方なの?」
「そうなのだ。橋倉ちゃんは、とーっても厳しいのだ。でもぉ~いい人なんだよ」
そう言うと橋倉さんがポロポロ涙を零しだす。
「ど、どうしたの? お姉さん」
ママが驚いて声を上げると橋倉さんは涙をレースのハンカチで拭いながら言う。
「ごめんなさい。私、会社ではいつも孤独で…こんな風に飲みに行くことなんてなくて……」
「寂しかったのね」
ママの一言で更に溢れ出す涙。
「こんな店で良かったら、いつでも歓迎するわよ。ねぇ、ミーメちゃん」
「そうそう! 橋倉さん、また来て下さいよ」
「ありがとう」
そして、橋倉さんは秘めた想いをポツリポツリと語り出す――
「私だって、ちゃんと分かってるのよ。部長のこと好きになってもダメだって。あんな素敵な人が私のことなんて見てくれる訳ない。
部長は口は悪いけど、本当はとっても優しい人なのよ。会社の中で孤立してる私に、普通に接してくれる人は部長だけだった。それが嬉しくて……
だから、せめてもの恩返しだと思って、部長には気持ちよく仕事してもらおうと色々、出過ぎたこともしてきた。
その中でも、私が一番気にかけていたのが女性問題。社内恋愛で部長が左遷させられるのだけは嫌だった」
「橋倉さん……」
だから私に、あんなにクドいくらい銀との関係を聞いてきたのか。
「でも、そんなの余計なお世話なのかな……」
銀の外見以外を、こんなに絶賛した人に初めて出会った。
橋倉さんの優しさに感動していると新人おかまちゃんの茜ちゃんが私達の横に座り、とんでもないことを言ったんだ。
「ねぇねぇ、その沢村部長さんって、あの銀ちゃんのことでしょ?」