この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
銀に散々バカにされ、すっかり意気消沈。
これも全て、あのおっちゃんのせいだ!
プリプリ怒りながら家に帰ったのだけど、銀の特訓話しを思い出し、華に伝えた。
華の顔は引きつりイヤイヤとゴネたが、次の日の土曜、保育園が昼までで終わり、お迎えから戻るとジャージ姿の銀が待ち構えていて無理やり華を公園に連れて行った。
心配になってコッソリ覗きに行くと泣きながら走る華と難しい顔をした銀が居た。
華、泣いてるじゃん。可哀想……赤いジャージを着た銀が赤鬼に見える。
「ちがーう! ハナコ、何度同じことを言わせる。腕は外側じゃなく、真っ直ぐ前後に振れ!」
「うぇ~ん、出来ないよぅ~」
「泣いて許されると思ったら大間違いだ! 出来るまで終わらねぇぞ!」
街路樹の陰に隠れ様子を伺っていたが、もう限界。
「ちょっと! もうやめて! こんな小さい子供に酷過ぎる。そんなに華が憎いの?」
「なんだ、ミーメか。ハナコが憎いワケねぇだろ? こんなに優しく教えてるのに……」
「どこがよ!」
すると華が駆け寄って来て、私の足にしがみ付き「もぅヤダー!」と大泣きした。
「ほら見なさい。こんなに泣いて……ちょっと、人の話しを聞きなさい!」
私が怒鳴ってるのに、銀は華の耳元で内緒話しを始めた。
「な、分かったか?」
「う、うん……」
今まで泣いてた華が涙を拭き、立ち上がる。
「華、頑張る!」
「へっ?」
キリリとした顔をして駆け出して行く華。
「銀、華になんて言ったの?」
「それは言えねぇな。俺とハナコの秘密だ」
爽やかな笑顔を残し、華を追いかけて行く銀の姿は、まるで、青春映画の一場面を見る様な清々しさを感じる。
やっぱ、いい男だ~
でもこの時、銀が何を言ったかは謎のまま。華も決して言おうとはしなかった。