この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

そして、銀と華の秘密の特訓は1ヶ月間続き、保育園の園長先生が驚くほど華は早く走れるようになったんだ。


運動会まで、あと3週間と迫ったある日のこと、仕事が終わった部長室に私と銀は居た。


「どういうことよ。長期出張って……いつまでなの?」

「んん、そうだな……1ヶ月ってとこか」

「1ヶ月も? そんなに長いの?」

「1ヶ月なんて、あっと言う間だ」


銀はそう言って笑うけど、私には、とてもそんな風には思えない。


「じゃあ、華の運動会の頃には居ないのよね」

「あぁ、でも、なんとか時間作って行くようにするさ」


華、今年の運動会は銀が来てくれるって凄く楽しみにしてたのに……
頑張って練習して、早く走れる様になった姿を銀に見せたいって張り切ってた。


「華ね、一等取るって言ってたよ」

「そうか……」


銀も少しは悪いと思ってるのか、暗い顔をしてる。


「で、出張はいつから?」

「明日だ」

「えぇ、明日なんて……急だな」


寂しくて堪んないよ。明日から何を楽しみに会社に来ればいいの?そんな出張、断っちゃえばよかったのに……


でも、そんなこと言えない。まだ出張の用意があると言う銀を残し部長室を出た。


はぁーっ……華になんて言おう。


家に帰って華の顔を見たら、余計、言えなくなってしまった。


運動会で友達のお父さんが自分の子供を応援してる姿を羨ましそうに見てた華。今年、銀が来てくれたら、皆に自慢するんだって言ってたよね。


可哀想な華……ごめんね。




――そして、次の日
銀は会社には顔を出さず、直接出張先へ行ってしまった。


銀、今頃何してるんだろう。会いたいな……


会社でもボンヤリして仕事に身が入らない。銀の居ない毎日がこんなに色あせ、つまらないものだったとは……


仕方なく、銀の顔を思い出し、えっちな妄想に更ける。


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