この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

今朝も会社に行くのが億劫で、ダラダラ用意をしてると華が不思議そうに聞いてきた。


「ねぇ、ミーメさん、最近、銀様来ないけど……どうして?」

「あ、それは、仕事が忙しいからじゃない?」

「そう、昨日、かけっこの練習で一等取ったから、銀様に教えてあげようと思ったのに……ミーメさん会社で銀様に会ったら、遊びに来てって言っといてね」

「う、うん。分かった」


こんなに楽しみにしてる華に銀が運動会に来れないかもなんて言えない。でも、早い内に言わないと……


銀は何とかするって言ってたけど、離島に居たんじゃ、帰って来るなんて無理に決まってる。期待させたらショックが大きくなるだけだ。


どうしたものかと考えながら華を保育園に預け、ため息をつきながら会社に向かう。


降りそそぐ日差しに、まだ暑さが残る9月。でも、頬を撫でる風は既に秋の香りがする。


その物悲しい冷たさは、銀の居ない寂しさを更に増していく……


銀、早く帰って来て。


しんみりしながらオフィスのドアを開け、席に着く。


「神埼さん、元気無いわね。部長が居ないと別人の様だわ」


橋倉さんは苦笑い。


「そんなこと……あるかな」

「困ったものね。そんなこと言ってちゃ、部長に怒られるわよ」

「怒られたっていいもん。銀に会いたい」


すっかり弱気になってしまった。


それでも仕事はしないとと気合を入れ、パソコンを立ち上げるといきなりメールが受信された。


そして、パソコン画面の文字に私は愕然とし、言葉を失う。


何……これ……




《大スクープ!! リゾート開発営業部 第3フロア 沢村銀之丞部長に、隠し子疑惑発覚!!》


そんな……嘘でしょ?


< 190 / 278 >

この作品をシェア

pagetop