この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「……あ、ごめん。今、良く聞こえなかった。東京のなんて大学?」
「東京の東京大学」
「えっと……私のこと、からかってる?」
「いや、特にからかってはない」
どんなリアクションとっていいのか分からない。それが本当なら、私、東大生を初めて生で見た。
「ところで、お前、パソコン持ってるか?」
「あ、う、うん。家にならあるけど……」
「そうか、じゃあ、貸してくれ。明日までに小論文書きあげなきゃいけねぇんだよ」
「ちょっと待って。それって、私の家に来るってこと?」
「当然、そうなる」
当然って……平然とした顔でサラリととんでもないこと言ってくれる。
「ダメ! 絶対、ダメ!」
「なぜ?」
「いい? 私とアンタはたった今、ここで会ったばかりで、私はアンタにそこまで親切にする義理はいの!」
「ふーん……」
真顔で私の顔を見つめる銀之丞。納得したのか?
「あぁ……明日までに小論文を提出しないと単位が取れないかもしれねぇなぁ~留年か……俺の人生、ここまでだな。
金も無く、食うことも出来ない可哀想な俺。せっかく縁あって出会ったヤツにも冷たくあしらわれ、この冷たいベンチでひとり寂しく夜を明かし、夜風に吹かれ風邪を引き、高熱を出して野垂れ死にか……
いつから世間はこんなに冷たくなっちまったんだろうな。俺は……俺は、悲しい。ほんの少しの情があったら、欠片ほどの優しさがあったら……
でも、もういい。これが俺の運命だ。受け入れるしかないんだよな。短い人生だったけど、俺は幸せだったよ。最後の晩餐がこの弁当なんだな。ありがとな。美味かったよ。あぁ……でも、せめてパソコンさえあったら……」
銀之丞の瞳が涙で潤んでいる様に見えた。
「ぎ、ぎんのじょーさーん! うぅっっ……っ、可哀想~」
まだ純粋で、おこちゃまだった私は、銀之丞の猿芝居を真に受け、彼が可哀想で堪らなくなり、恥ずかしながら号泣していた。