この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「いいよ。私のボロパソコンで良かったら使って!」
絶叫に近い声で叫ぶと、今までどんより暗かった彼の顔がパッと明るくなる。
「マジか?」
「うんうん」
「じゃあ、お前の家に行くか?」
人助けをした自分の優しさに酔いしれ、どこの誰かも分からない男を我が家へと誘(いざな)う愚かな私。
家に着くまでの道すがら、私は手短に自分の生い立ちを話していた。
不思議だった。見ず知らずの人間に、友達にさえ話していない自分の過去を話してる。この男は、私の警戒心を見事に消し去ってしまったんだ。
「ここだよ。このアパートの2階」
「はぁ? これがお前の家? こんな古びた建物に住んでるのか? 消防法はクリアしてるんだろうな?」
「嫌なら来なくていいし……」
「行く」
外階段を上がり、部屋の鍵を鞄から取り出しながら私は低い声で銀之丞に念を押す。
「いい? お母さんと彼氏が居ると思うけど、知らん顔してたらいいから。挨拶なんてしなくていいよ」
「分かった」
カチャ……
静かに鍵を開け、ドアを引く。
男の人連れて帰るなんて初めてだから妙にドキドキしちゃう。でも――
「あれ?」
変だな。やけに静かだ。それに真っ暗。いつもなら眠っててもテレビが点いてるのに……
キッチンのテーブルに鞄を置き、居間へと続く引き戸を少し開けて中を覗き込むと、カーテンが開けっぱなしの窓から月明かりが差し込みガランとした部屋を照らしていた。
……誰も居ない。