この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
銀之丞は、いつになくクソ真面目な表情をして熱く語り続ける。
「お前、初めて俺と会った時、怪しいヤツだと思ったろ?」
「うん」
へぇ~意外だ。自覚してたんだ。
「でも、俺が東大生と分かったら、妙に安心したろ?」
「まぁ……確かに」
「なんだかんだ言って、学歴で判断してるってことなんだよ。人なんてそんなもんだ。だから高校くらいは、ちゃんと卒業しろ」
まるで悟りを開いた坊さんみたいに目を閉じ「うんうん」と首を上下に振っている。
「よし! 分かった! 俺がお前の保護者になってやる」
「はぁ?」
「母親が居なくなった今、お前を保護出来るのは俺だけだ。心配することはない。全て俺に任せとけ」
「本気で言ってるの?」
コイツに任せることがどれだけ危険なことか、分からなかった訳じゃない。でも、私の将来をこんなに真剣に心配してくれた人が今まで居ただろうか?
多分、初めての人だ。
「と、ゆーワケだから、俺はここに住まなきゃいけない。なんたって、保護者なんだからな!」
むむむっ……なんか変な感じ。私、銀之丞の策略に、まんまとハマってないか?
そして、私と銀之丞の奇妙な同居生活が始まった。あくまでも同居。同棲ではない。亜紀菜には親戚の人と暮らし始めたと嘘をついた。
この状況を素直に話して納得してもらえるほど、私は話術にたけてない。と、ゆーより、こんな意味不明な男と同居してるってことが知れたら、間違いなく反対される。それが嫌だった。