この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
先生たちは、銀之丞が本物の東大生だと分かるとバツが悪そうに言葉を濁し帰って行った。
銀之丞は呆れた顔で「俺の言ったとーりだろ? センコーでもああなんだ。世の中はもっと厳しいぞ」とため息をつく。
「そうだね。高校は出ておかないとね」
「あぁ」
「それより、お前、成績の方は大丈夫なんだろうな? 俺が家庭教師だって言った手前、赤点なんかとったらシャレになんないぞ」
「あ……」
「ったく……仕方ねぇな~今日から勉強見てやるよ」
「えぇ~っ!」
「えぇ~じゃねぇよ。バカミーメ!」
「えっ?」
この時、初めて銀之丞に名前で呼ばれた。
「桃ちゃんがそう呼んでたろ? あ、それと、俺のことは"銀"でいいぞ! お前に"銀之丞さん"なんて呼ばれると体中がかゆくなる」
「はぁ?」
この日から、学校にバイト、夜の勉強と忙しい日々が続いた。
銀と一緒に居ると相変わらず言い合いばかりだけど、楽しかった。もし銀と出会うことがなかったら、私は今頃、どうしてたかな?
高校を辞めて働いてた? 独りぼっちのこのアパートで泣いていたかも……
私の中で銀の存在がどんどん大きくなっていく。それはつまり、彼を必要とし、失いたくないと思ってるということ。
私は、銀に恋してる。なのに銀ときたら、私にまったく何もしてこない。
毎晩、隣に寝てるのに寂しいな……
そんなある夜のこと、中々寝付けなかった私は、スヤスヤと眠る銀の横顔を眺めている内に自分の感情を抑えきれなくなったんだ。