この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

「私、この通帳しか持ってないよ。それより、銀の家ってお金持ちなんでしょ? ちょっとくらいちょろまかしてこれないの? ねぇ、ダメ?」


すると銀は沈んだ顔をして「無理だ……」って呟く。


「俺の家が金持ちだったのは、お前と出会う少し前までだ」

「どういうこと?」


深いため息をつき、銀が話し出した。


「俺の両親は、俺が生まれてすぐ離婚したんだ。兄弟は3人、上のふたりは親父が引き取り、まだ小さかった俺だけが母親に引き取られた。

親父は大企業の社長。母親は資産家の娘。セレブ同士の結婚だったが上手くいかなかった。離婚して実家に帰った母親は、別段苦労することなく実家で気ままに暮らしていた。

ただ、俺の教育に関してはうるさくてな。何がなんでも東大に行けって……今思うと、親父への当て付けだったのかもしれねぇな。まぁ、見栄っ張りが服着て歩いてる様な女だったからさ。

10年前に爺さんが死んで、母親が後を継いだんだが、素人の上に金銭感覚が無い。騙されて土地を取られるわ、保証人になって借金背負わされるわで、爺さんの残してくれた財産も底をついた。

そんな矢先、ミーメと会う1ヶ月前。その母親も呆気なく死んじまった。不幸中の幸いって言うのかな……財産は残って無かったが、借金も無かった。

そこへ、20年ぶりに親父から連絡があって、戻って来いと……そんなの、まっぴらゴメンだ。で、俺は家出してきたってワケ。だから親には頼れねぇんだよ」

「なるほど…」

「て、人が一生懸命話した感想が、その一言かよ?」

「そんなこと言ったって、他に言うことないし……」


銀は情けないとばかりに、大きく息を吐き「それは大変だったわね。可哀想な銀……とか、言えねぇのかよ?」とふくれっ面。


ああ、そうか。同情して慰めて欲しかったんだ。


「そっか、銀も辛い経験したんだね。よしよし」


そう言って頭を撫でてやると満足そうな顔してる。わりと単純だ。


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