悪魔からの逃亡~愛された証と共に~
想い出に浸っていると、ノックもなしに扉が開く。
「和真さん?」
カレが迎えに来たと思って振り返ると、そこにいたのは違うヒト。
後ろ手で扉を閉めて、そのまま鍵をかける。
「……っ、どうして……」
「由貴、迎えに来た」
「はる、と……」
愛してる彼が、目の前にいる。
髪を乱して走り寄った春人に、力一杯抱き締められた。
「お腹の子、俺の子だろ?」
「なん、で……」
「あの時の子だろ?」
妊娠してること、春人は知らないはず。
なのに、知っていた。
春人の子だとは、誰にも言わないつもりだったのに。