俺様編集者に翻弄されています!
 こういう時の北村はろくなことを考えていないに決まっている。


 警鐘が鳴り響いいて氷室は身構えると、それを察した北村が胡散臭い笑顔で言った。


「お前にもうひとり作家の担当を持って欲しい、後藤エミリーだ」


「なっ……お前、俺を生贄にするつもりか?」

 後藤エミリーといえば、わがまま放題のセレブ気取り女王様作家だ。名前を聞くだけでも眉間に皺が寄ってしまう。


「だから話し聞けって、エミリー先生、今の担当者外してくれなかったら、もううちで書かないって言いだしてさぁ、俺もあの女王様ぶりにはお手上げなんだ。けど、この件が収まれば、ユーリ先生の書籍化と映画化の話し、俺が全面的にバックアップしてやる」


「汚いぞ……」

「仕事だから仕方がない、諦めろ」


 氷室はすでに数十人と人作家を受け持っている。正直これ以上担当作家を増やしたくない、けれど北村が出してきた見返りは、氷室にとって十分すぎるほど魅力的だった。


 その時―――。

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