俺様編集者に翻弄されています!
 氷室美岬。

 私立小中を経て高校からニューヨークへ単身留学。

 アメリカの某有名私立大学文学部を博士号で卒業後、ニューヨークの大手出版社に勤務―――。


 履歴書に連ねられた資格・特技などは悠里には馴染みのないものばかりで、一体どんなものなのかさえわからなかった。

 こんなカチカチの型にはまったような経歴だが、写真の顔はまったく反比例するような今時の若者風だ。


「この人、会ったことあるの? どんな人? 日本語喋れる? それから身長とか、好きな食べ物―――」


「あんた何ってんのよ、いくら海外暮らしが長いって言ったって母国語は忘れないでしょ。あぁ、そういえば去年だったかなぁ……一週間くらい出張でここに来てたような……そもそも、そのニューヨークの出版社、うちと連携してて彼が引き抜かれたのも何かあってのことだと思うけど、悠里の「愛憎の果て」だって英訳されて海外に売り出される可能性だってあるのよ?」


「ええっ!? ほ、ほんと?」


 自分の小説が海外で読まれるなんて夢みたいな話しだ。


「悠里だってその「愛憎の果て」のみならず、ちょこちょこだけど、今まで出してきた小説も注目されて右肩上がりに売れてきてるじゃない、あぁ……私もできることならあんたを最後まで支えてあげたかった」


 加奈は心底残念そうに項垂れた。
< 15 / 340 >

この作品をシェア

pagetop