俺様編集者に翻弄されています!
(氷室美岬……氷室美岬……)


 何故か頭の中でその名前がぐるぐる回って、悠里はどんな人なのかと想像してみた。
 履歴書の顔写真を見なければ、女性だと言われても違和感のない名前でもある。


(もしかして……実は履歴書は偽装で、実際の本人はめちゃくちゃアメリカンヒッピー風とか? もしくはストリート系のラッパー風だったり? やっぱり本当は女の人とか?) 

 編集者は基本的に堅苦しいスーツなど着ない、だからといってアメリカンナイズな人だったら……と想像してしまう。


<なになに? 僕の趣味を聞きたいの? ピザとコーラに映画を見ながらカウチポテトだよ、それから週末は決まって庭でバーベキューさ>

<な、なんか……すごくきらきらしてるものが背景に見えます……>

<きらきらしているのは、君だって同じだよスィーティ>

<ス、スィー……ティ!?>



「はっ!?]


 悠里はアメリカンナイズの先入観にぶんぶんと首を振って、想像を掻き消した。

(いや、こんな編集者だったらある意味めんどくさそうだな……)

 氷室美岬という人物が、一体どんな人なのか考えるのも少し気だるくなってきた時、悠里は心地よい空調に眠気を感じ始めていた。 



(……でも、ここで寝るわけには……)



 くだらないことを考えているうち、いい感じに効いてる暖房の暖かさに誘われて、悠里の意識は徐々に眠りの淵に沈んでいった―――。
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