俺様編集者に翻弄されています!
 この賭けは、悠里の小説家の命がかかっていた。出版社から捨てられるか、それともまだ小説家として受け入れてくれるのか―――。


「この話しを連載していくには、氷室さんの力が必要なんです。氷室さん以外の担当がつくならこの話、連載してもらわなくていいです」


「うーん、そう言われても……」


 北村は真っ直ぐな悠里の視線に狼狽するように頭を掻いた。


「じゃあ、これ……違う出版社に持っていきます」

「え……!」

 慌てる北村の姿に悠里は少し優越を感じた。駆け引きを持ち出すような真似をして卑怯だと思う。それこそ自分のもっとも嫌うエミリーと同じだった。

(それでも、私は氷室さんを取り戻したい……)


 我ながら自分自身に呆れる。

 けれど、一生に一度だけでも好きになった人に対して必死になって、我が儘になったとしても、きっと誰か許してくれる。

 そう言い聞かせて、悠里は北村の言葉を待った。


「……そっか、ユーリ先生は作家の前に、女性でしたね」


「え……?」


 悠里は北村の理解できない言葉に意表を突かれて目が点になった。


「なぁんだ、やっぱりそういうことだったんですね。あはは、氷室もああ見えてメンタル弱いやつですから、ユーリ先生に執着する度に昔を思い出してたのかもしれない」



 ―――昔のこと。


< 307 / 340 >

この作品をシェア

pagetop