俺様編集者に翻弄されています!
 連れてこられた映画館は、悠里も数回来たことがあった。

 椅子の座り心地もよく、音響も画像も都内ではトップクラスで映画館の中でもお気に入りの場所だった。


「愛憎の果て」はリピーターも多く、一応過激な描写があるので、R指定で年齢層も制限されているというのに、今日も館内は満席だった。


「ほら、飲み物、お前の好みがわからなかったから、適当に買ってきた」


 先に席に座って待ってるように言われ、悠里はひとり落ち着かない気持ちを抑えながら待っていると、氷室がコーラを両手に戻ってきた。

「す、すみません。ありがとうございます」

(なんか、案外気の利く人……だったり?)

 さりげなくドリンクホルダーに挿す仕草に、距離の近さを感じさせられてドキドキしてしまう。


「やっぱり日本の映画館はいつ来ても綺麗だよな……」


 その時、氷室がぽつりと言った。
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