【完】ヒミツの恋を君と。
あの日のキスを思い出す。

甘くて、熱くて、求め合って……。




あたしは思い出すだけで溶けてしまいそう。




でも、晴はあの日以降も至って普通。


あたしにとったら、あれが初めてのキスだったから大事件だったのかもしれないけど、晴にとったらあんなこと大したことじゃなかったのかもしれない。





ただ寂しかっただけ…とか?

あたしへのお礼…とか?



あの時の晴の気持ちは分からない。



分かることはひとつ。


あの日以来、晴はあたしに触れてない。

もちろんキスも、あの日以来していない。



意識してるのはあたしだけかもしれないな。



キスを思い出して頬が熱くなるのを隠すように、俯いてプリントを見るふりをした。



さ、さぁ、しっかり!集中!集中!

そう気合を入れた時だった。


視界にフッと晴の手が……。


その手があたしの頬の方に伸びてくるから、びっくりして顔を上げて晴を見た。



頬に晴の手が触れる。

ジッとあたしを見つめるその目と目が合った。





「……へ?」


「桃佳……」





ピリリピリリ───。



晴があたしの名前を口にした時、部屋中に携帯の着信音が鳴り響く。



それはあたしの携帯で。





「あ……」


「…ごめん、出て」





晴が頬から手を離して、プリントに視線を戻す。

頬にまだ感触が残ってて、少し寂しく感じた。



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