月宮天子―がっくうてんし―
「人間に分際で……天魔王の血を引く我らを愚弄しおって! 望みどおり、先に喰ってやろう」


怒りのあまり氷月は朔夜から離れ、愛子に飛び掛ろうとした。


「カイーーーッ!」

「こっちだ――氷月!」


なんと海が『光剣』を手に突っ込んできた。


(大丈夫なの? 光が出なきゃただの棒よっ)


だが、愛子の心配は杞憂に終わる。

氷月が朔夜から離れたその瞬間、海は『光剣』を振りかぶった。『光剣』は蓮が使うより白銀に近い光を放ち、太く長い剣が姿を現した。それが氷月の脇腹を切り裂く。


「うがあああぁぁぁっ!」


氷月は断末魔の悲鳴を上げ、その場に倒れ込んだ。腹からは大量の血痕が流れ出ている。苦しそうに、それでも体を起こし、這いずりながら森の中に逃げ込もうとする。


「カイ、氷月にとどめを!」


朔夜は起き上がりながら海に向かって叫んだ。


「う……ん」

「カイッ! 何をしてるのですっ! 逃がして万一にも生き残れば、奴はまた人を襲います!」

「わ、かってる。わかってるんだけど……」


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