月宮天子―がっくうてんし―
愛子はブルッと頭を振るい、
「お、お巡りさん……アレも、お巡りさんです。お腹が突き出た。変な化け物みたいになってて……ここで、何かを食べてて。多分、お巡りさんを」
「何を言っとるんだ!? わかるように言いなさいっ!」
「だから……わたしにもわかんないんだってばっ!」
「とにかく、本署に連絡……有働(うどう)くん、連絡を頼む。私はコレで、あの化け物を威嚇してみるから」
そう言うと、腰のホルスターに納まった拳銃に手を添えた。そして愛子を怒鳴りつける。
「君は家に戻りなさいっ! 家に入って鍵を掛けるんだっ!」
「でも、あの人が……」
「とにかく君は逃げるんだっ! 有働くん早く」
そう言って振り返った定年警官いや、佐々木(ささき)警部の動きがピタリと止まった。
若い警官の様子がおかしい。
……ウゴッ……ウグッ……ゲフッ……嗚咽でもない、しゃくりを上げているような奇妙な動作を繰り返している。
それに、何かが燃えているのだろうか? 赤い煙が彼の体から立ち昇っていた。
有働と呼ばれる警官は、体をひと際大きく痙攣させると、激しく吐瀉した。
その直後、くぐもった声を発しながら、背中の辺りがモコモコと盛り上がって行く。有働は苦しいのか、両手で顔を覆ったままだ。
「う、どう……巡査?」
目の前で起りつつあるのは、尋常ならざる事態だ。
少しすると朱色の靄が晴れ、佐々木警部の呼びかけに有働巡査が顔を上げたのである。
「お、お巡りさん……アレも、お巡りさんです。お腹が突き出た。変な化け物みたいになってて……ここで、何かを食べてて。多分、お巡りさんを」
「何を言っとるんだ!? わかるように言いなさいっ!」
「だから……わたしにもわかんないんだってばっ!」
「とにかく、本署に連絡……有働(うどう)くん、連絡を頼む。私はコレで、あの化け物を威嚇してみるから」
そう言うと、腰のホルスターに納まった拳銃に手を添えた。そして愛子を怒鳴りつける。
「君は家に戻りなさいっ! 家に入って鍵を掛けるんだっ!」
「でも、あの人が……」
「とにかく君は逃げるんだっ! 有働くん早く」
そう言って振り返った定年警官いや、佐々木(ささき)警部の動きがピタリと止まった。
若い警官の様子がおかしい。
……ウゴッ……ウグッ……ゲフッ……嗚咽でもない、しゃくりを上げているような奇妙な動作を繰り返している。
それに、何かが燃えているのだろうか? 赤い煙が彼の体から立ち昇っていた。
有働と呼ばれる警官は、体をひと際大きく痙攣させると、激しく吐瀉した。
その直後、くぐもった声を発しながら、背中の辺りがモコモコと盛り上がって行く。有働は苦しいのか、両手で顔を覆ったままだ。
「う、どう……巡査?」
目の前で起りつつあるのは、尋常ならざる事態だ。
少しすると朱色の靄が晴れ、佐々木警部の呼びかけに有働巡査が顔を上げたのである。