月宮天子―がっくうてんし―
ニコニコしながら語りかける母に、海は爽やかな笑顔を向けたのだ。
なんか悔しくて、海が友子から受け取ろうとしたケチャップを、愛子は横からぶん取った。目一杯わざとらしく、フフン、という顔で愛子は海に視線を向ける。
海は仕方なさそうにマーガリンなしのトーストをかじり、ケチャップなしの目玉焼きを食べ始めた。
途端に罪悪感が胸にこみ上げ、愛子はマーガリンとケチャップを海に差し出した。
「ありがとう、愛ちゃん」
「……別に」
意地悪したのに怒りもせず、お礼を言う海がなぜだか眩しい。
愛子は色んなことを思い出し、胸がドキドキして、それ以上海の顔が見られなくなる。
「近くでも事件があって、しかも昼間でも安全とは言えないでしょ? 高校への往復に付き添ってやって欲しいの。直ちゃんは、お友達が車で送り迎えしてくれるから安心なんだけど……」
夏休みが始まり、補習のために登校しようとする愛子を引き止め、娘を心配した母親がそんなことを言い出した。
これまで、事件は夜に集中していた。
しかし、ついに二日前、昼間に殺人事件が起こったのである。
場所は都内の賃貸ビルに事務所を構えていた金融業者。早く言えばサラ金だ。出前のどんぶりを下げに来たラーメン屋が遺体を発見、事件が発覚した。
社長以下従業員四人とも皆殺しだったという。当初、恨みを持った者の犯行か? と思われたらしいが……。殺害方法の残忍さと、まるで大型肉食獣の食事跡に思える殺害現場に、一連の猟奇殺人と同一犯の犯行と決定付けられたのだった。
なんか悔しくて、海が友子から受け取ろうとしたケチャップを、愛子は横からぶん取った。目一杯わざとらしく、フフン、という顔で愛子は海に視線を向ける。
海は仕方なさそうにマーガリンなしのトーストをかじり、ケチャップなしの目玉焼きを食べ始めた。
途端に罪悪感が胸にこみ上げ、愛子はマーガリンとケチャップを海に差し出した。
「ありがとう、愛ちゃん」
「……別に」
意地悪したのに怒りもせず、お礼を言う海がなぜだか眩しい。
愛子は色んなことを思い出し、胸がドキドキして、それ以上海の顔が見られなくなる。
「近くでも事件があって、しかも昼間でも安全とは言えないでしょ? 高校への往復に付き添ってやって欲しいの。直ちゃんは、お友達が車で送り迎えしてくれるから安心なんだけど……」
夏休みが始まり、補習のために登校しようとする愛子を引き止め、娘を心配した母親がそんなことを言い出した。
これまで、事件は夜に集中していた。
しかし、ついに二日前、昼間に殺人事件が起こったのである。
場所は都内の賃貸ビルに事務所を構えていた金融業者。早く言えばサラ金だ。出前のどんぶりを下げに来たラーメン屋が遺体を発見、事件が発覚した。
社長以下従業員四人とも皆殺しだったという。当初、恨みを持った者の犯行か? と思われたらしいが……。殺害方法の残忍さと、まるで大型肉食獣の食事跡に思える殺害現場に、一連の猟奇殺人と同一犯の犯行と決定付けられたのだった。